忍者ブログ
つっこみ自由などうしようもない女のブログ。 現在のホットな話題は【モンハンF】デス。 あとはジニたんとジニたんとジニたん。 レミオロメンも大好きで追っかけですvV お気にはOKですが、なんかのリンクツールはアウトです。そこらへん。よろしく。
[202] [201] [200] [199] [198] [197] [196] [195] [194] [193] [192]
最新記事
カレンダー
12 2025/01 02
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
水草蓮
性別:
女性
職業:
副団長
趣味:
もふ
自己紹介:
もふに夢中なダメ女。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

馬車の戸を開き、ユグドラシルにどさっと大量の林檎を渡される。
「ジーニアスが好きなんだ。」
そうぽつりと言って馬車に乗る。
「わかった。
また、来てくれ。」
そう言うと変な顔をされ、
「ああ。ジーニアスを頼む。」
「わかってる。」


「ただいま。
林檎沢山貰ったぞ。」
そう言いながら入るとジーニアスが慌てて目をこする。
「おかえり。
ありがとう。いつも沢山くれるの。」
嬉しそうに林檎を一つとり、そのままかじる。
ざくっとした歯ごたえ。
じんわりと甘い果汁。
ぽたりと垂れて床を濡らす。
「凄いね。
ユグは林檎選びの天才だよ。」
後で近所にお裾分けして、ジャムを作ろうとジーニアスが言う。
「…ジーニアス。
部外者の私が言うのもなんだが、いいのか?」
「何が?」
林檎を抱えたジーニアス。
暗闇を映している瞳。
「お前には何かの庇護が必要だ。
彼…ならお前を大切にしてくれる保障があるのに何故拒む?」
「クラトスは…何も知らないから言えるんだよ。
その言葉。」
冷たい響きを含んだ声。
「僕は大丈夫だよ。
あれは…仕方がなかったんだ。」
そう呟いて、もう会話は終わりと言わんばかりに台所へと行ってしまった。

じゃあさっきのは?
目をこすったのは泣いていたからでは?
クラトスは一つため息をついて洗濯を終らせるために外に出た。

ユグドラシル。
年齢は自分より年下でジーニアスより年上。
元々、ジーニアスの幼なじみである。
前領主の一人息子。
容姿淡麗頭脳明晰。
町を心の底から愛し、大切にしている。
町の人もそんな領主を慕い、好いている。
ジーニアスが住んでいる界隈はこの町の保護区であり、家賃はほぼ無賃。
障害者及び失業者、年寄り、身よりのない子供などが暮らしている。
町からは住む場所と少量の金が保障されている。

彼は完璧だった。
町を愛する良き領主。
結婚相手としては申し分ないだろう。
なのになんでジーニアスが断るのかが分からない。
二人の間に深い溝があるのも。
ジーニアスには幸せになって欲しい。
心からそう思い願う。

しとしとと雨が降る。
「お洗濯物乾かないねぇ。」
部屋にぶらさがっている洗濯物。
邪魔だし湿気が酷いし…とジーニアスがぼやく。
「そうだな。
お茶でも煎れるか。
火を少し焚けば緩和されるだろう。」
そうクラトスが言い、立ち上がる。
「うん。そうだね。」
ジーニアスが嬉しそうに言う。
「戸棚にまだスコーンあるからそれと林檎ジャムもね。」
「はいはい。」
ジーニアスに言われたように戸棚からスコーンを取り出し皿に。
ジャムを瓶ごと皿に乗せ、ジーニアスの前に。
「もうすぐ湯が沸くから待てよ。」
「はーい。」
元気の良い返事を返してくる。
ことんとほどよく冷めた茶の入ったカップが置かれる。
「いただきます。」
ジーニアスが嬉しそうにカップを手で包み込むように持ち、一口飲む。
林檎の皮を干してハーブティーと混ぜたオリジナルだ。
林檎の爽やかな酸味が丁度いい。
「ジーニアスはお茶の天才だな。
こんなに飲みやすい美味い茶を作るのだから。」
「そんなことないよ。」
ジーニアスが照れる。
可愛いなとか頭の隅で思いながらジャムの蓋を明け、ジーニアスに渡す。
ありがとうとジーニアスが言い受け取る。
見えないのに起用にジャムを掬い、スコーンに付けて食べてゆく。
「クラトスは?」
「少し貰う。」
ジーニアスにジャムを少し貰い、食べる。
焼きたても美味いが、冷めても美味しい。
ジーニアスは凄いなと思いながら食べていると、
「ねぇ。クラトスはいつ、旅に出るの?」
顔を上げてジーニアスを見る。
「だって…貴方は旅の途中でしょ?
こんな所で道草食べちゃ駄目。」
「……そう…だな。」
一口茶をすする。
ジーニアスとの生活は心地よく、楽しい。
ずっと昔から一緒に暮らしていたようで。
「あのね。
あんまりクラトスが長い間居てくれるとね。
頼っちゃうの。
クラトスは…旅の途中。
いつか居なくなる。
そう考えると凄く悲しくて寂しいの。」
今まで一人だった。
一人で身の回りをこなし、生活してきた。
クラトスが来てから重労働である水汲みや薪運び仕事をしなくて済んだ。
何か困ったらクラトスが手を差しのべてくれた。
嬉しいし、有り難い。
「だけどね。
あんまり甘えたくないんだ。
一人…にまたなったら困るから。
ごめんね。僕の都合で。」
ジーニアスが申し訳なさそうに言う。
「いや。すまない。
つい、ジーニアスの好意に甘えてしまったな。」
クラトスが謝罪の言葉を述べる。
「実は…梅雨があけたら行こうかと。
ずっと思っていて言いだせなかった。
すまない。」
「ううん。いいの。
僕こそごめん。
追い出すみたいで嫌だね。本当。」
最後の一口を噛み砕いて飲み込んで。
「支度しなきゃ。
日持ちするパン焼かなきゃね。」
ジーニアスが楽しそうに言う。
「旅の支度手伝うのなんて初めて!」
貴重な体験だよねと笑顔で言葉を繋げる。
「僕の分まで旅をしてください。
僕の分まで世界を見てきてください。
僕は…。
僕は貴方の友人として願います。」
その言葉が心の底まで浸透する。
「ありがとう。
近くに来たらまた寄るから。」
そう言ってジーニアスを抱きしめる。
「うん。待ってるね。
ずっと。ずっと。」
ジーニアスが小さく呟いてクラトスにしがみついた。


からっと晴れた日。
クラトスは旅に出た。
なんでかユグドラシルも見送りにきた。
「気をつけて!
元気でね!」
ジーニアスの声。
「ああ。ジーニアスも元気で!
ユグドラシル。
ジーニアスを任せた!」
「ああ。わかっている。」
友の背中が小さくなる。
「あのね。ユグ。」
「なんだ?」
ジーニアスの小さな声。
「僕ね。多分クラトスの事好きだよ。」
小さな呟き。
「…そうか。」
それだけ返してジーニアスに帰ろうと促す。

彼を束縛するのは簡単だ。
自分が必要だから傍にいてと言えば彼はいてくれただろう。
だけど駄目だ。
彼は旅の途中。
きっと何かを探しいるのだろう。

そう思った。




一部終わり。


去年の秋あたりからずっと携帯に放置していたのを書きました。
一応一部。前半。
次は中編で後半。
三部構成です。
まだジーニアスは生きていますね。
ユグドラシル様がいまいち報われません。
ジーニアスとユグドラシル様の間にある溝は二部にて。
他の小説も書かなきゃ?
PR
つっこむ
name
title
color
URL
comment
pass Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
Powered by ニンジャブログ Designed by 穂高
Copyright © みずくさぶろぐ All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]